無停電で簡単に測定
 クランプ式接地抵抗計 解説書
EARTH RESISTANCE CLAMP TESTER
新開発の「クランプ式接地抵抗計」は接地線をクランプするだけで、あらゆる接地を簡単に、安全に測定できる。
本稿では、その特徴と測定方法について述べる。
1章 開発の背景 (従来機種との違い) GO!>>
2章 システム構成と測定原理、仕様 GO!>>
3章 用途(適用場所)と測定例 GO!>>
4章 日常のメンテナンス GO!>>

 

カット写真(クランプ式接地抵抗計(MET1)の基本構成)
▲クランプ式接地抵抗計(MET1)の基本構成

2章 (1) システム構成に戻る


 1 開発の背景 (従来機種との違い)

 接地は、電気機器による感電防止や落雷対策などの系統接地、機器接地といったいわゆる保安用接地が主体であったが、近年、情報通信機器、弱電機器がビルの設備として多数設置されている関係上、接地が非常に複雑になっている。

 第1図 従来の接地抵抗計での測定
 接地が本来の役目を果たしているかを確認するには、接地抵抗を測定する必要があるが、第1図に示すような、従来の電位差計式の接地抵抗計では、都市化による地面がコンクリートやアスファルトで舗装された環境では、補助接地棒を打たずに簡単に測定できる接地抵抗計の要望が高まってきた。
 また、従来、3極式接地抵抗計の代わりにクランプ型アーステスタが市販されていたが、この製品は、多重接地しか測定できなく、単独接地を測定することはできなかった。  今回開発した、クランプ接地抵抗計(MET1)は、電路の共振現象を利用した新しい発想から生まれた接地抵抗計である。
 この接地抵抗計は接地線をクランプするだけで、あらゆる接地を簡単に、安全に、時間的制約を受けずに測定できるため、接地の定期的な管理には非常に便利である。
 ここでは、この測定器の特徴や測定方法について、述べる。

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 2 システム構成と測定原理、仕様

(1) システム構成
 カット写真は、クランプ式接地抵抗計(以下、MET1)で、基本構成としては、測定部本体、注入用CT(INJECTION CT)、検出用CT(CT SENSOR)、補助リード、充電器(CHARGER)から構成される。
 携帯時および測定時に便利なように、携帯ケースを附属している。なお、電源は充電式電池を内蔵しているので、電源のない所でも測定可能である。



(2) 測定原理

第2図 低圧電路における測定

第2図に低圧電路(三相3線)における測定方法を記している。
 一般的に工場などにおける配電路は、変電室(キュービクル)からダクトを通って、室内、モータなど負荷機器に接続されている。このように、ダクトを通って配電路が長い場合、電路には、電路インダクタンス(L)、電路の抵抗(R)、電路、大地間の静電容量(C)が存在する。
 この状態を等価回路にすると、第3図のようになる。

第3図 等価回路

 等価回路において、注入用CTより電路に約320mVp-p程度の電圧を、周波数4kHz~400kHzまで可変させ、重畳する。すると、電路のL、C0、あるいはr、C1によりある周波数で、電路が共振現象を起こし、電流(i)が流れる。
 共振時は電流が最大であり、重畳電圧と同相であることから、RBを通った最大電流を検出用CTにより検出し、R=v/iよりRBを求める。
 電路が共振しない場合、末端の負荷機器まで行き、CとRDを通りRBまで帰ってくるため、抵抗値として、RB+RD+ZCとなる。
 このときは従来の3極式接地抵抗計より抵抗値が高くなり、誤差が大きくなるが、たいていの電路は、4kHz~400kHzまでまでで共振するため、精度よく接地抵抗を測定することができる。

第1表 クランプ式接地抵抗計(MET1)の仕様
測定機能 接地抵抗、交流電流(線電流、漏れ電流)
測定範囲
接地抵抗: 1~200Ω(最小分解能0.1Ω)
交流電流: 0~20A(最小分解能0.1mA)
(50/60Hz) (3レンジオート)

測定精度
(23℃±2℃ 80%RH以下)
接地抵抗: 10Ω以下 ±0.5Ω
10Ω以下 ±2.0Ω
10Ω超過50Ω以下 ±0.5Ω
50Ω超過150Ω以下 ±20Ω
交流電流: ±2%rdg ±8dgt

検出用CT CT窓径:φ34mm(分割型)
注入用CT CT窓径:φ34mm(分割型)
注入周波数:4kHz~400kHz(オートスイープ)
注入レベル:320mVp-p
表 示 2行×16文字キャラクタ LCD(コントラスト調整付き)
耐電圧 AC3 700V(CTコア金属部-握り部間)
AC2 300V(電源-ケース間)
絶縁抵抗 100MΩ(CTコア金属部-握り部間) DC500Vメガーにて
50MΩ(電源-ケース間) DC500Vメガーにて
内臓電池 Ni-Cd 電池(1.2V×5)
寸法・重量 本体寸法、190(W)×140(H)×42(D)mm、重量 800g
検出用CT460g、注入用CT460g
付属品 携帯ケース…1、充電器…1、補助リード…1

(3) 仕様
第1表に、MET1の仕様を示す。測定項目としては、接地抵抗のほかに、交流電流(線電流、漏れ電流)も測定できる。

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 3 用途(適用場所)と測定例

(1) 用途(適用場所)
MET1を使用して適用場所を以下に示す。
 1  特別高圧、高圧機器の外箱、鉄台の接地抵抗
 2  避電器の接地抵抗
 3  特別高圧計器用変成器の二次測電路
   以上A種接地
 4  B、C、D種接地抵抗
 5  等電位ボンディング用導体の接地確認用
 6  静電対策用アースマットの接地抵抗、静電気対策用アース
 7  多重接地箇所の接地抵抗
 8  通信用接地
   以上のように、広範囲に使用できるものであるが、測定原理として、電路共振現象が起きないことには測定誤差が発生する場合があるので、注意する必要がある。

写真1 測定方法

(2) 測定例

写真1 (測定方法)
▲写真1 (測定方法)

写真1と下段第4~6図に測定例を示している。測定例に基づき、測定器の取り扱い手順を以下に述べる。
< 測定手順 >
測定する前に内臓電池を充電する必要がある。
(a) 写真1に基づき、注入用CT、検出用CTを接続する(入力端子の挿入場所を間違えないこと)。
(b) 電源スイッチをONにし、測定モードを電流モードにする(Current)。
(c) 注入用CT、検出用CTを測定したい接地線にクランプし、接地線の地電流を測定する(地電流が2A以上は、接地抵抗測定に適さない電路である)。
(d) 測定モードを接地抵抗(Earth Res)モードにし、CTOUTの位置で測定スタートする。約30秒後に測定値を表示する。
測定方法として、Terminal Outでの方法もあるが、今回は除く。

< 注意点 >
 測定例に基づき注意点を説明する。

第4図 測定例(三相3線式、活線状態)

 第4図は三相3線式電路の例である。(A)は高圧機器の外箱の接地測定である。この場合、電路がないので、共振現象が起きない。補助リードで、B種接地と接続して測定する。
 (B)はB種接地でありる。この場合、電路インダクタンス、大地間静電容量もあるため、問題ない。
 (C)は避電針の接地線である。この場合、電路がないため補助リードでB種接地と接続すれば、測定が可能となる。
 (D)はD種接地である。D種の場合、モータとか負荷機器を示すが、機器の静電容量が少ないと共振しないため、負荷機器は運転状態にし、静電容量を増やして測定する。
 (E)は等電位ボンディング導体であり。この場合、ループ抵抗を測定していることになるが、等電位ワイヤが確実に接続されていないと指示値が高くなる。この指示値を管理することで、等電位ボンディングの管理ができる。

第5図 配電線の接地抵抗測定例

 第5図は配電線の接地測定例である。この場合は共同架空接地線により、共同接地になっている。大地とは静電容量がないため、電路共振は起きないが、ループ抵抗として測定することになる。
 MET1では、電路のインダクタンスが抵抗分と見なされ誤差となる(測定値が高目に出る)。この問題点を解消した、MET2が開発されている。

第6図 電路が多重接地の場合

 第6図は電路が多重接地になっている場合である。この場合(A)、(B)、(C)のいずれで測定しても同じ接地抵抗を示すように思われるが、単相3線、三相3線で同一ダクト上に配線されている場合、お互いに静電容量でループを作る場合がある。したがって、接地抵抗としては、(C)の所で測定する。

< 測定結果から見た良否の判定 >
接地抵抗値は、電力設備に係わる接地として、A種からD種まである。また、通信設備に係わる接地、建物に係わる接地もある。


第2表 接地工事の種類と接地抵抗値
接地工事の種類 接地抵抗値
A種接地工事 10Ω
B種接地工事 変圧器の高圧側または特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で、150(状況により300、600)を除した値に等しいΩ数。※電力会社に問い合わせのこと。
C種接地工事 10Ω(漏電遮断器などの設置により、0.5秒以内に地絡を生じた電路を遮断できれば500Ω)
D種接地工事 100Ω(漏電遮断器などの設置により、0.5秒以内に地絡を生じた電路を遮断できれば500Ω)

(電気設備技術基準の解釈第19条抜粋)

 第2表は電気設備技術基準の解釈第19条を表にまとめたものであり、測定した接地抵抗値が、この値を満足しているかを判定する。
 
第3表 電算機の接地に関する要求基準(例)
  大型システム
(専用室設置)
中型システム
(オフィス設置)
小型システム
ワークステーション
パソコン
端末機器
接地極の抵抗 10Ω以下 100Ω以下 100Ω以下 100Ω以下

(電気設備学会誌 平成11年10月抜粋)

 第3表は電算機の接地に関する要求基準例であり、参照されたい。

 
第4表 電算機の接地に関する要求基準(例)
接地機器 種 類 MET1
測定値(Ω)
3極式接地抵抗
測定値(Ω)
避雷設備用 A種 5.1 5.7
A種 6.3 7.5
特高機器 A種 8.7 9.1
ケーブルシース A種 7.7 7.2
トランス B種 2.0 1.5
B種 11.2 10.1
低圧機器用 D種 12.5 12.4
端 子 盤 A種 4.7 4.5
C種 6.7 6.2
D種 14.1 13.5
建 屋 A種
(並列接地)
14.9 14.0
13.7 14.1
8.6 9.5
13.2 15.0

第4表はMET1と3極式接地抵抗計の比較データである。
 大きな設備では、電路、大地間静電容量もあり、電路共振を起こしているため、3極式と同等のデータが得られている。
 3極式接地抵抗計では頻繁にできなかった測定もクランプ式では容易に測定できるため、あらかじめ、フィールドの状況を把握しておけば、接地の管理をクランプ式でも十分行えることがわかる。

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 4 日常のメンテナンス

(1) 測定前にやっておきたいこと  このクランプ式接地抵抗計は、充電式のため、測定前には充電の有無を確認する必要がある。
 満充電における場合での測定回数は約300回程度であるが、充電用電池は自己放電もあるので、注意したい。
 また、測定はクランプセンサによって行うため、クランプ部の開閉状態のチェック、およびリード線の破損状態を事前にチェックする必要がある。
 異常と思われる場合は、メーカーに点検依頼を勧めたい。

(2) クランプ式接地抵抗計の校正(第7図参照)

第7図 クランプ式接地抵抗計の校正方法

 標準抵抗器を用いた校正(5Ω)、(30Ω)を半年に一度を目安に実施するとよいと思う。
 測定精度をはずれている場合は、メーカーに依頼する。
 特にクランプセンサは、乱暴に扱うと破損したり、測定値が異常になったりするため、十分注意が必要である。  

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マルチ計測器(株) (クワバラ ノブユキ)